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ノートとペン

コラム

弁護士事務所のBCP——「先生が倒れても依頼人を守る」体制の作り方

  • 5月14日
  • 読了時間: 3分

弁護士事務所のBCP(事業継続計画)は、一般企業のBCPとは性格が異なります。

一般企業が業務停止した場合は「売上の損失」ですが、弁護士事務所が業務停止した場合には「依頼人が法的な支援を受けられなくなる」という直接的な被害が生じます。裁判の期日が迫っている依頼人、在留資格の申請期限が迫っている外国籍の方、離婚協議の急展開に対応が必要な方——これらの方々への影響は、単なる経済的損失にとどまりません。弁護士職務基本規程には、依頼者の利益保護義務が明記されています。



弁護士事務所の業務停止が依頼人に与える影響

裁判の期日徒過——

主任弁護士が急病で入院した場合、裁判所への期日変更申請が必要です。連絡が取れなければ期日が徒過し、依頼人に不利益が生じます。期日徒過は場合によって取り返しのつかない法的不利益をもたらします。


書類提出期限の超過——

官公庁・裁判所への書類の期限は延長できないことが多い。システムへのアクセス手段が失われれば、書類の作成自体ができません。案件情報が担当弁護士のPCにしかない場合、事務職員が代替することも不可能です。


依頼人への連絡途絶——

担当弁護士としか連絡を取っていない依頼人は、突然の連絡途絶に不安を感じます。他の弁護士への引き継ぎも、案件情報へのアクセス手段がなければできません。


弁護士事務所のBCPで整備すべき3点

案件情報の共有体制——

「担当弁護士のPCにしか案件情報がない」状態を解消することが出発点です。SharePointやクラウド案件管理システムで案件情報を共有し、担当者が不在でも他の弁護士・事務職員がアクセスできる状態にします。ただしアクセス権限の設計は守秘義務との兼ね合いで慎重に行う必要があります。


代替連絡先の設定——

依頼人への連絡手段として、担当弁護士の直通番号だけでなく、事務所代表番号と事務職員への連絡経路を依頼人に伝えておくことをお勧めします。「先生が不在でも事務所には繋がる」という安心感が、依頼人との信頼関係を維持します。


緊急時の代理対応の手順化——

突然の業務停止が起きた場合、誰がどの案件を引き継ぐかの優先順位と手順を文書化します。すべての案件を完全に引き継ぐことは困難ですが、「直近の期日がある案件」「依頼人への連絡が必要な案件」のリストが即座に出てくる状態が目標です。


ITと弁護士法の両立

弁護士の守秘義務は、案件情報の共有体制を作る際の制約になります。「案件情報を職員と共有していいか」という問いに対しては、業務遂行上必要な範囲での情報共有は守秘義務違反にならないと解されています。

重要なのは、アクセス権限を適切に設定することです。担当弁護士と必要最小限の職員のみがアクセスできる設定で案件情報を共有フォルダで管理することは、BCP上も守秘義務上も合理的な対応です。

利益相反の確認システムと案件情報の共有を組み合わせることで、引き継ぎ時の利益相反チェックも効率化できます。


「先生が1人しかいない」事務所の場合

個人事務所の場合、代替する弁護士が社内にいません。この場合は、「信頼できる他の弁護士との相互支援協定」を事前に結んでおくことが現実的なBCP対策の一つです。


システムへのアクセス手段と案件の所在さえ分かれば、他の弁護士が一時的に対応できることは多い。その「アクセス手段の確保」がIT整備の目的です。協定を結ぶ弁護士との間で、「緊急時にアクセスできる範囲と手順」を事前に合意しておくことが必要です。

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行政書士事務所みまもり

セキュリティ研究者・デジタルフォレンジックエンジニア

成田 浩志

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