士業の「もし私が倒れたら」——担当者不在でも業務が止まらないIT設計の話
- 5月1日
- 読了時間: 3分
「もし私が急に倒れたら、この事務所は翌日から動けなくなる」
士業事務所の所長や、IT担当者を一人で担っている事務局長から、こういった話を聞くことがあります。問題は認識しているのに、忙しさで先送りにされている典型的な課題です。

「属人化」は情報漏洩リスクと表裏一体
IT管理の属人化——特定の一人だけがシステムのことを把握している状態——は、情報漏洩対策と逆方向のリスクを生みます。
情報漏洩は「出ていく」リスク。属人化は「入れなくなる」リスク。
どちらも、事務所の業務を止める要因になります。「所長しかパスワードを知らない」状態は、所長が急病で連絡が取れなくなった瞬間に、事務所のクラウドデータへのアクセス手段を失うことを意味します。
「業務停止」が現実になる場面
急な入院、交通事故、家族の介護での突然の長期休業——これらは決して珍しいことではありません。
官公庁への申請期限が明日に迫っているのに、担当者PCのパスワードが分からない。顧問先から急ぎの問い合わせが来ているのに、案件ファイルのある共有フォルダにアクセスできない。ホームページに問い合わせが来ているのに、管理画面のIDを誰も知らない。
これらは「ITの問題」というより「経営継続の問題」です。セキュリティ対策の文脈で語られることが少ないですが、属人化による業務停止リスクは、ランサムウェア感染や情報漏洩と同列に扱うべき経営リスクです。
整備すべき3点
鍵管理の二重化——重要なアカウントの認証情報を、経営者一人だけでなく、もう一人の信頼できる立場の人が「緊急時のみ開封」という形で保管できる状態にします。デジタルのパスワードマネージャーと、アナログの封書・金庫を組み合わせた管理が現実的です。「二人が知っている」ことが情報漏洩リスクを高めるとも言えますが、誰も知らない方が業務停止リスクとしては致命的です。バランスの問題です。
共有フォルダと権限設計の整備——「所長のPCにしかない」ファイルをなくすことが出発点です。案件ファイルをSharePointやOneDrive(組織アカウント)で管理し、適切な権限設計をしておけば、担当者が突然いなくなっても他の職員が業務を引き継げます。「どこにあるか分からないファイル」を消すだけで、かなりのリスクが低下します。
緊急時の対応手順書の整備——「何かあったとき誰に連絡するか」「どの順番でどのシステムを確認するか」「最低限続けなければならない業務はどれか」を1枚の紙にまとめておく。これだけでも、混乱の時間を大幅に短縮できます。手順書は、作った人以外が読んで実行できることが条件です。「専門知識がなくても、指示通りに動けば最低限の業務が継続できる」状態が目標です。
BCPとITは切り離せない
BCP(事業継続計画)というと大げさに聞こえるかもしれません。でも実態は「誰かが突然いなくなっても、明日の業務ができる状態にしておく」という準備です。
士業事務所においては、担当者不在時のIT面の対策がBCPの中核になります。システムへのアクセス手段と、ファイルの所在が分かれば、他の人間が代替できることは多い。逆に言えば、それが分からないだけで業務は止まります。
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行政書士事務所みまもり
セキュリティ研究者・デジタルフォレンジックエンジニア
成田 浩志




