障がい者福祉施設の
物件要件
物件の選定の注意事項
障がい者福祉施設を開業するにあたって、物件の選定は最重要事項の一つです。
特に就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、グループホーム、放課後等デイサービスなど、利用者に施設に来所してもらうような事業の場合、法律によって厳しいハードルが設けられています。
選定を誤れば、物件の契約後に解約することになる等、不要な費用が発生するほか、開業の時期が遅れることによる機会損失が発生する可能性もあります。
ここでは、障がい者福祉施設の物件を選定するにあたって注意すべき事項を紹介します。
物件の広さ
障がい者福祉事業で指定を得るには、利用者が問題なく用途に応じたサービスを受けられるように、一定の広さや特定の用途の部屋が求められます。
たとえは就労継続支援A型や就労継続支援B型、就労移行支援の場合は、作業や訓練の専用の部屋として、利用者一人当たり3.3㎡の広さの部屋が、放課後等デイサービスの場合は利用者一人当たり2.47㎡の部屋が必要とされているケースが多いです。
また、グループホームの場合は居宅スペースが一人当たり7.43㎡の広さが求められます。
上記の他に、施設の用途に応じてプライバシーに配慮した相談室や、衛生面・使いやすさに配慮した洗面台やトイレの要件が定められています。
面積や必要な設備の要件は指定権者によって異なる場合があるので、必ず指定権者に確認をしてから物件を探すようにしてください。
物件の安全性(建築基準法)
障がい者福祉事業を行う場合、当然ながら施設の安全性が担保されていなければ指定を受けることができません。以下に指定を受ける上で重要なポイントをご紹介します。
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用途変更
既存の建物を福祉施設として利用するには、原則として用途変更の手続きが必要となります。用途変更が必要となる理由は、建物の利用方法よって安全の基準が異なるためです。用途に応じた安全基準が保たれている必要があるため、建物には用途が定められています。
用途変更の費用としては数十万円から大きいときで数百万円かかることもあります。
利用面積が200㎡以下と規模が限られている場合は用途変更が不要となるため、多くの福祉事業の指定申請では、用途変更が不要な利用面積200㎡以下で進めることになります。
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検査済証
建物などが建築基準関連の法令などの規定に適合していることを証明する書面です。多くの指定権者で添付書類として求められますが、実務上は検査済証がない不動産物件も少なくなく、後述の一級建築士による安全証明が行われたことを示す書面を用いることも多くあります。
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一級建築士の安全証明書
検査済証など建物の安全性を確認する書面がない場合、一級建築士により安全の確認を行ってもらうことがあります。既にある図面を基に、現地に行って図面通りに建築されているかを確認し、用途として安全性に問題がなければ作成してもらえます。
安全証明書の費用の相場としては、十数万円程度のものが多いです。
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耐震基準
1981(昭和56)年5月までの建築確認において適応されている基準を「旧耐震基準」、1981(昭和56)年6月以降の物を「新耐震基準」と、一般的に呼ばれています。
福祉の事業においては、指定権者によっては旧耐震基準の建物を利用することに対して必ずしも認められないという訳ではありません。しかしながら、別途一級建築士の安全証明を求められることもあり、結局は耐震補強工事が必要になるということも少なくありません。
また、指定権者によってはそもそも新耐震基準の建物であることを強く求めるところもあります。
以上のように、障がい者福祉事業を行う上で、建築基準法をはじめとする規定により、建物の安全性を担保することが強く求められます。これらを踏まえた上で物件を選定する必要があります。
都市計画法
都市計画法では、都市の各エリアにどのような建物を立てて良いかを市町村などが決めることができるように定められています。
エリアによって、第1種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域、高度利用地区、特別用途地区などに分かれています。
上記の中でも障がい者福祉施設は「工業専用地域」以外の場所では事業を行うことを認められることが多いですが、必ず各指定権者の用途制限は確認するようにしましょう。
市街化調整区域マップで該当する場所がどの地域に分けられているかや、微妙な場合は指定権者の役所に直接問い合わせることで確認できます。
簡単に確認をすることができますが、誤って事業が認められない地域の物件を賃貸・購入してしまうと、ほぼ確実に指定申請が通ることがないため、最も注意する事項の一つです。
市街化調整区域マップ
消防法
障がい者福祉施設を運営する際、消防法の規定に従って適切な設備を設置することが必要です。これらの設備は、施設の種類によって異なります。主に、自力避難が困難な利用者(「6項ロ」)と自力避難が可能な利用者(「6項ハ」)を収容する施設で必要な設備の要件が分かれます。
「6項ロ」「6項ハ」の施設は、それぞれ以下のように分かれます。
6項ロ(自力避難が困難な利用者が主となる施設)
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身体的、精神的、知的障害などにより、緊急時に自力で安全に避難することが困難な利用者を主となる
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重度障害者のための日中活動施設や、重度心身障害者を収容するグループホームなどが該当
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これらの施設では、スプリンクラーシステム、火災通報装置、自動火災報知器などの高度な安全設備が要求されることが多くある
6項ハ(自力避難が可能な利用者が主となる施設)
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自力で避難が可能な障害者を主に収容する施設を指す
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軽度の知的障害者や身体障害者のための就労継続支援A・就労継続支援B・就労移行支援や、一部の障害者グループホームが該当
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自力避難が可能な利用者が多いため、6項ロに比べて消防安全設備の要件は緩和されるが、基本的な消火器、非常警報装置、避難器具の設置は必要
また、それぞれの施設に対して必要な消防安全設備は以下の通りです。
消火器
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「6項ロ」ではすべての施設に必須
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「6項ハ」では延べ面積150㎡以上の場合に必要
屋内消火栓設備
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両カテゴリーで延べ面積700㎡以上の施設に必須
スプリンクラー設備
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「6項ロ」では基本的に全施設に必要。一部施設では275㎡を超える場合に必要
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「6項ハ」では床面積合計が6,000㎡以上で必須
自動火災報知設備
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「6項ロ」「6項ハ」で原則すべての施設に必要
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「6項ハ」で入居宿泊を伴わない施設は300㎡以上でのみ必要
漏電火災警報器
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両カテゴリーで延べ面積300㎡以上の場合に設置が必要
火災通報装置
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「6項ロ」では必須。火災報知設備と連動する必要あり
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「6項ハ」では500㎡以上で必要
非常警報装置
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収容人数が50名以上の場合に両カテゴリーで必要
避難器具
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収容人数が20名以上で必要。特定の下階の場合は10人以上で必要
誘導灯
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全施設で設置が必要
水防法、土砂災害防止法
「水防法」及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防災対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」に基づき、指定権者によっては、該当する地域の施設管理者は避難確保計画の作成及び市への提出、避難訓練の実施が義務化されています。また、非難の実効性を高めるために、避難訓練の報告も求められます。
指定申請においては直接的な影響はないことが多いですが、該当する施設は事業開始までに準備しておく必要があります。
物件契約の時期
障がい福祉事業の指定申請は、多くの場合事前申請と本申請に分かれています。物件を選定し、役所の各機関で各法令に適合していることを確認した上で事前申請を行います。事前申請が通れば、内容の変更がなければほとんどの場合は本申請も問題なく通るので、事前申請が認められた段階で物件の契約を締結するのが一般的です。
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